経鼻インフルエンザワクチン「フルミスト®」について
フルミスト®は、鼻にスプレーするタイプの弱毒化インフルエンザ生ワクチンです。
注射が苦手なお子さんでも痛みなく受けられることから、海外では2003年にアメリカで承認されて以降、現在まで広く使われてきています。
日本でも昨年の2024年秋から利用できるようになりました。
当院でも、今年2025年秋から導入することにしました。¥8,000/年です。
ここでは、対象年齢や注意点、効果や副作用、そしてよくあるご質問についてまとめます。
対象と接種方法
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対象年齢:日本では 2歳〜18歳 が適応です(海外では成人まで対象の国もありますが、日本では年齢上限があります)。
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接種回数:1シーズンにつき 1回。左右の鼻にそれぞれ0.1mLずつ、合計0.2mLを噴霧します。注射のように2回接種は不要です。
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接種の流れ:自然に鼻で呼吸している状態で噴霧します。強く吸い込む必要はなく、すぐに終わります。
接種できない方・注意が必要な方
以下の方は接種対象外となります。
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2歳未満のお子様、19歳以上の方(日本での適応外)
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妊婦
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免疫不全がある方、免疫抑制治療中の方、抗がん剤治療中の方
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ワクチン成分に重いアレルギーがある方
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接種直前に抗インフルエンザ薬を使った方(一定期間あける必要があります)
また、以下のような場合は医師と相談が必要です。
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重度の喘息のあるお子さん(特に2〜4歳で最近喘鳴があった場合や、重度・コントロール不良の喘息)
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ご家族に重度の免疫不全の方がいる場合
効果と特徴
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フルミストは鼻に点鼻することで、体内の免疫(IgG)以外に、鼻の粘膜でも免疫(IgA)を作るため、感染予防効果が高い可能性があります。ウイルスの侵入を防ぐ壁(=免疫)を作れるため、元々壁のない小児では特に効果が期待されるとされています。
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注射型の不活化ワクチンとの比較試験では、有効性(感染予防効果、重症化予防効果)は概ね同等とされています。シーズンや流行株によっては差が出ることもあります。
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痛みがなく1回で済むため、注射を嫌がるお子さんにとって大きな利点です。
- 効果は約1年続くとされていて、毎年3月頃の注射ワクチンの効果切れが気になる方はよいかもしれません。
副反応
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よくあるもの:鼻水、鼻づまり、咳、軽い発熱、頭痛など。数日で自然に軽快することがほとんどです。
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ごくまれに:喘鳴、強いアレルギー反応(アナフィラキシー)など。異常があればすぐに受診してください。
よくある質問(Q&A)
Q1. 家族にうつりますか?
A. フルミストに含まれるウイルスは弱毒化されており、健康な人にうつる心配はほとんどありません。ただし、6か月未満の赤ちゃんや免疫の弱いご家族がいる場合は、注射型ワクチンを選ぶ方が安心です。接種後1週間は、そのような免疫の弱い方との接触を避けることが推奨されています。
Q2. 大人も受けられますか?
A. 日本では対象が 2歳〜19歳未満 に限られています。成人は従来どおり注射のワクチンが推奨されます。理由として、大人は鼻粘膜のIgAができているのでワクチンの効果が弱い可能性が言われていますが、海外ではそのような証拠はないとして49歳までは投与している国もあります。とはいえ、現状、製薬会社としては日本国内で成人に対象を広げるような臨床試験を組む予定はないそうです。
Q3. 注射のインフルエンザワクチンと両方受けると効果が増しますか?
A. 2つ接種すると効果が増すという根拠はありません。安全性の確認もされていないため、現状ではおすすめはできず、当院ではどちらか1つだけとさせていただきます。
Q4. 鼻がつまっている時でも接種できますか?
A. 鼻閉が強いとワクチンが粘膜に届きにくくなります。その場合は日を改めるか、注射ワクチンを検討いただいた方がよいかもしれません。
Q5. ほかのワクチンと同時に接種できますか?
A. 同時接種は可能です。
Q6. 喘息があると受けられないのですか?
A. いいえ、すべての喘息が禁忌ではありません。軽症でコントロール良好なら接種できる場合もあります。ただし、2〜4歳で最近喘鳴がある場合や重度の喘息では接種を避けた方がよいとも言われています。気になる場合はご相談ください。
Q7. 抗インフルエンザ薬を飲んでいました。どのくらい待てばいいですか?
A. 一般的には、薬の使用終了から 48時間以上空ける必要があります。接種後2週間以内の薬使用も避けるのが望ましいとされています。詳細は医師にご確認ください。
まとめ
フルミストは「痛みがなく1回で済む」小児にやさしいインフルエンザワクチンです。注射型と効果は同程度で、特に注射を嫌がるお子さんには大きなメリットがあります。
値段は少し高いですが、注射2本分より少し高いくらいですので、元々注射を2回接種予定の2-12歳までのお子さんでは特におすすめです。元々注射1回で済む13歳以上の方にとっては割高ですが、「痛くない」「長く効く」は中高生にもメリットはあると思います。
一方で、生ワクチン特有の注意点もあるため、喘息の有無やご家庭の状況に応じて医師と相談のうえで選ぶことが大切です。
2025.9.16 院長 力石浩志