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起立性調節障害

起立性調節障害について

小学校高学年から中学生くらいの思春期の子どもで、「朝に具合が悪い」という症状が現れることがあります。
これを「起立性調節障害」と言います(昔は「自律神経失調症」と言っていました)。
起立性調節障害では、長時間座っていたり寝ていたりした後で急に立ち上がったときに、めまい、ふらつき、立ちくらみ、倦怠感、頭痛などの症状が現れる状態です。
これは、血液が適切に体の上半身に供給されず、酸素や栄養素が脳にうまく届かないためとされていて、
思春期では、体の発育に対して自律神経の調節がうまくいかなくなることが原因と考えられています。

起立性調節障害の主な症状は次のとおりです

  1. めまいやふらつき:立ち上がった瞬間に頭がクラッとする感覚やバランスが崩れる感じがあります。
  2. 立ちくらみ:立っているときに視界が暗くなったり、ふらついたりすることがあります。
  3. 倦怠感:疲れやだるさが頻繁に現れ、活動することが難しくなることがあります。
  4. 頭痛:頭が重く感じたり、頭痛が起こったりすることがあります。
  5. 集中力の低下:学校や日常生活での注意力や集中力の低下が見られることがあります。

程度は様々です。朝起きたときに軽い頭痛がする程度のものから、
全く朝起きることができず、夕方頃にやっと活動ができるため、全く学校に通えないレベルまであります。
ただ、強い症状であったとしても、夕方以降には比較的症状が改善し、普通に生活ができるため、
「怠け癖」や「精神的問題による不登校」と勘違いされてしまうことも度々あります。
厳密には違うものなのですが、精神状態は起立性調節障害の状態に大きな影響を与えるため、
精神状態を安定させることは起立性調節障害の治療としても大事です。

診断のためには、病歴の詳細な確認や身体検査、血圧や心拍数の測定、体位変動テストなどの検査が行われ、
「起立直後性低血圧」「体位性頻脈症候群」「血管迷走神経性失神」「遷延性起立性低血圧」の4タイプに分かれます。

治療では、まずは生活習慣の見直しが重要です。
十分な睡眠と規則正しい生活、適度な運動、しっかりとした水分・食事摂取を心がけることが推奨されます。
朝起きられないのでつい夜更かしになりがちですが、少し運動をして体を疲れさせ、
夜のスマホなど、神経が高ぶることを避け、可能な限り早く寝るようにします。
運動をすることは、神経調節能力を改善させるためにも大切です。
起立性調節障害では、血圧が下がることが症状を悪くするので、しっかり水分を摂り、血液量を増やします。
目安として、1日に2L程度の水分摂取を勧めることが多いです。
それでも効果不十分な一部の患者には、薬物療法を行うこともあります。
薬物療法は、血圧を上げる薬や、体質改善の漢方薬を用います。
これらの対応で改善する人もいますが、人によっては、数年にわたって強い症状が出て、普通学校には通えないこともあります。
そのような場合、どのような生活を送り、どのような進路をとるかも含め、主治医や学校の先生との密な連絡が必要です。

また、本人や兄弟家族、学校の先生や友達など、周囲への病気の周知・教育が必要です。
上記のように、周囲から見ると怠けているようにもみえてしまうのがこの疾患の特徴です。
でも、本人は本当に辛いのです。
動きたいけれど動けない。朝は、何が何だかわからないけど頭痛がすごい。
それを周囲がわかってあげられずに、「怠けてる」「不登校だ」と言ってしまうと、
体だけではなくメンタルも崩れ、それがまたさらに症状を悪化させる悪循環となります。
周囲の方への説明が本人・ご両親だけでは難しい場合は医師から説明するのもひとつの方法と思います。

他の急性疾患と異なり、時間のかかる、改善の見えにくい疾患です。焦ると逆効果な部分も多いです。
しかしながら、その間にも貴重な思春期の時間は過ぎていきます。
状況を受け入れ、その状況下でできることを見つけ、行っていきながら、体調の改善=治癒を待つ、という姿勢が本疾患には大切であると考えます。

2023.6.21
力石浩志

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