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予防接種(予診票ダウンロード)

予防接種

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定期接種

ムンプス

 


人類の歴史は感染症との戦いでもありました。
過去には寄生虫、コレラ、赤痢、チフス、ペスト、梅毒、天然痘、結核、マラリア、黄熱病などを乗り越え、近年では新型インフルエンザ、SARS、新型コロナウイルスの流行などもありました。
また、小児で重症化する感染症として、麻疹やインフルエンザ菌(Hib:ヒブ)、肺炎球菌、感染すると後遺症を残す可能性のあるおたふくやみずぼうそうなどもあります。
これらを、予防接種を行うことで予防する、ということをしてきました。
近年では、ヒトパピローマウイルス感染による子宮頸がんを予防するワクチンもあります。

日本では現在、予防接種法で定められ、費用補助により無料で接種できる「定期接種」と、補助は出ないが可能であればおすすめしたい「任意接種」とがあります。
また、病原体の「カケラ」を接種して免疫を作る『不活化ワクチン』と、弱めた病原体そのものを接種する『生ワクチン』とがあります。
生ワクチンは病原体そのものに近いので免疫ができやすく、1回ないし2回の接種で終わります。
不活化ワクチンは免疫を作る力が弱いので、多くは「初回接種3回+追加接種1回」の計4回程度の接種が必要になります。

定期接種と任意接種は、数年経つと変わります。
最新の2022年4月のものを元に記載します。
詳細は、日本小児科学会のホームページを参照ください。

http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=263

日本小児科学会推奨 ワクチンスケジュール(近日、4種混合が修正されたバージョンをupします)

生後2ヶ月から開始

生後2ヶ月から開始するワクチンは、現状では5つあります。
これまでのインフルエンザ菌(ヒブ)、肺炎球菌、B型肝炎、ロタウイルス、の4つに、
この4月から4種混合も、1ヶ月前倒しになりました。

インフルエンザ菌b型:ヒブ

インフルエンザ菌b型は、ヘモフィルスインフルエンザtype Bと言い、頭文字をとってHib;ヒブワクチンといいます。
インフルエンザという名前ですが、冬に流行するインフルエンザウイルスとは違い、細菌です。
低年齢の赤ちゃんに感染し、細菌性髄膜炎を起こします。
細菌性髄膜炎は、致死率10-20%、後遺症率30%と非常に重篤な疾患です。
予防接種をすることで、細菌性髄膜炎の発症を抑えることができます。
2,3,4ヶ月で1回ずつと、1歳をすぎて1回、計4回の接種をします。

肺炎球菌:PCV13

こちらも、小児では、赤ちゃんの細菌性髄膜炎・敗血症の原因菌です。
もちろん名前の通り、肺炎の原因にもなるのですが、小児の予防接種は髄膜炎・敗血症予防目的です。
肺炎球菌結合型ワクチン:Pneumococcal Conjugate Vaccineを略してPCV(ピーシーブイ)と言ったりします。
肺炎球菌には型が97種類あります。感染の頻度の高いものをいくつか組み合わせて予防接種とします。
2010年から7価ワクチンPCV7が始まり、敗血症・髄膜炎は50-60%減少しました。
2013年から定期接種となり、現在は13価ワクチンPCV13が使われています。
ヒブと同じく、2,3,4ヶ月で1回ずつと、1歳をすぎて1回、計4回の接種をします。

B型肝炎

B型肝炎ワクチンは、少し前までは、医療従事者や、海外に住む予定のある人に限定して行われていました。
昨今、B型肝炎からの肝硬変、肝細胞癌の発症が増え、1991年にWHOが、小児期のワクチン接種を全世界に勧告しました。
日本では2016年10月から、定期接種に組み込まれました。
なので、それ以前に生まれた方は、予防接種を受けていない子もいます。
小児期に接種を、となった理由としては、B型肝炎を保有している(=キャリア)親や、保育士からの子どもへの感染が認められたからです。
一般的には2ヶ月、3ヶ月、間を空けて7ヶ月、の3回接種になります。
また、出産時にお母さんがB型肝炎キャリアであった場合は、保険診療としての感染予防対策がとられます。
この場合は、生まれた直後に抗HBsヒト免疫グロブリンとB型肝炎ワクチンを接種し、さらに1ヶ月、6ヶ月後にワクチンを接種します。

ロタウイルス

冬に、白色の大量の下痢を伴い、脱水症、脳症を引き起こす胃腸炎ウイルスです。
2020年8月より、定期接種に組み込まれました。
消化管で免疫を作るので、注射ではなく飲み薬です。
現在、1価で2回接種のロタリックスと、5価で3回接種のロタテックの2種類があります。
理論上は5価の方がカバーできる型が広くてよさそうに思われます。
しかし1価でも、「交差免疫」で他の型もカバーできるとされ、ロタウイルス感染症予防効果はどちらでも差はないという報告が多いです。

接種は生後6週から開始できますが、上の3つと一緒に生後2ヶ月から開始することが多いです。
ロタリックスは2,3ヶ月、ロタテックは2,3,4ヶ月で内服します。
以前、別のタイプのワクチンを使用した際に、腸重積の合併症が多く出たために、そのワクチンは中止されました。
現行の2つは、腸重積の好発年齢(6-18ヶ月)を避けて設定されており、安全に投与されています。

四種混合

昔は三種混合(ジフテリア、百日咳、破傷風)でしたが、2012年より、それまで別に投与していたポリオも合わせ、四種になりました。今後、Hibが入って五種になる動きもあります。

  • ジフテリア:ジフテリア菌が感染後に毒素を出し、神経や心筋にダメージが入ります。
    ワクチンにより患者発生は抑えられていますが、諸外国では死亡例もあります。
  • 百日咳:成人も含め、年間1万人くらいの発症があります。
    スタッカート・レプリーゼという、激しい咳で息が吸えなく、顔が真っ赤になった後に、音を立てて吸うという症状が有名です。
    低年齢の場合、息が吸えなくなったり、無呼吸発作が起こったりで命に関わることもあります。
  • 破傷風:傷口から破傷風菌が入り、毒素が増えて筋肉が麻痺します。口が開けにくくなり、全身の筋肉が縮んでけいれんします。
  • ポリオ:感染しても多くは無症状・軽微な感冒症状で済みますが、一部で四肢麻痺や運動障害が残ることがあります。
    また、呼吸筋が麻痺し、人工呼吸器が必要になることがあります。

これまでは生後3ヶ月からのスタートでしたが、今年2023.4月より、1ヶ月前倒しになりました。2,3,4ヶ月で接種し、1歳になってから追加接種をします。
また、11歳になったら、ジフテリア・破傷風の二種混合ワクチンを接種します。海外ではこのタイミングで、百日咳も含めた三種混合を接種する国も多いです。
さらに、就学前にMR二期と合わせて三種混合を追加している国もあります。

生後5ヶ月

BCG

結核の予防です。
日本は毎年1万人以上の結核患者が発生し、約2千人が命を落としています。
成人では呼吸器感染症状が出ますが、小児では全身播種=粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)となることがあります。
「BCG」というのは、ワクチンを開発した研究者、カルメットとゲランの名前から、Bacille Calmette-Guerin(カルメットとゲランの菌)の頭文字をとったものです。

「ハンコ注射」と言われ、上腕に薬液を塗った後、3×3の9つの針のついた「ハンコ」を2回押します。
針の穴(18個)に薬液を染み込ませて、乾いたら終了です。
薬液の中に、弱めた結核菌がいますので、乾くまでは触れないようにしてください。
2週間くらいすると、針痕が赤くなり、膿んできます。接種後1ヶ月〜1ヶ月半くらいがピークで、その後徐々に薄くなります。
1週間以内にこのような反応が現れた場合、「コッホ現象」といい、既に結核に罹患している可能性があります。
診察が必要ですので、必ず見せにきてください。
接種時期は、時代とともに変遷しています。現在では生後5-8ヶ月の間、を標準としています。

1歳になったら開始

1歳になったら開始するものは、麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)、水痘、おたふくかぜ、の3つです。

麻疹・風疹

麻疹(ましん=はしか、Measles)と風疹(ふうしん、Rubella)の2つの生ワクチンを組み合わせたものです。

麻疹は、はしかとも呼ばれ、感染力の極めて強いウイルスです。
感染すると、高熱(二峰性)や咽頭炎、発疹が出ます。
予防接種により日本国内ではだいぶ制御はされていますが、数年に一度、海外からの持ち込みでアウトブレイクが起こります。
そのため、ワクチン接種による個人防御が必要です。

風疹は、3日はしかとも呼ばれ、一般的には軽い麻疹のような症状が出ます。
また、妊婦さんが妊娠初期に風疹にかかると、生まれながらに目や耳、心臓に障害のある子が生まれる「先天性風疹症候群」が問題になります。
妊娠適齢期の女性や、パートナーの男性は、予防接種歴や風疹抗体価の確認と、必要な場合は追加の予防接種(任意)をおすすめします。

MRワクチンは、1歳になった時に1回目、小学校入学の前の年(幼稚園や保育園の年長さん)に2回目、を接種します。

水痘

水痘=みずぼうそうです。ウイルスとしては、「水痘帯状疱疹ウイルス」といいます。
幼稚園・保育園、小学校で患者さんに接触した2週間後くらいに、体や顔、頭皮に、痒みを伴う水疱が多発します。
数日の間に増悪し、1週間くらいの経過で全ての水疱がかさぶたになったら隔離解除です。
熱は出ることも出ないこともあります。
発症早期に抗ウイルス薬を使用することで、ウイルスが増えるのを抑えることは可能ですが、罹患しない方がよいです。
一般的にはみずぼうそうの感染の後、ウイルスが神経に「潜伏感染」し、体調が悪くなると「帯状疱疹」として皮膚症状が出ます。

2014年から定期接種になりました。1―2歳の間に2回接種します。
通常1歳になって早期に1回、半年くらい空けて2回目を接種します。
3歳以上で、みずぼうそうにかかっておらず、ワクチンも接種していない子の場合は、任意接種にはなりますが、ワクチン接種が望まれます。

おたふくかぜ

おたふくかぜは、ムンプスウイルスの感染症です。
流行性耳下腺炎といい、耳の下の「耳下腺:じかせん」が大きく腫れて、押すと痛みます。
頬周りが腫れるので、昔ながらの「おたふく(お多福)・おかめ」な顔に見えることからこう呼ばれます。

おたふくの子に接触した2-3週後に、耳下腺が腫れてきます。片側→翌日にもう反対側、となることが多いです。
熱は出ることも出ないこともあります。
合併症として、無菌性髄膜炎=激しい頭痛が出ることがあります。
また、難聴になることがあります。年間数百人の発症があるとされています。
脳炎を起こし、命に関わる、または重度の障害が残ることがごく稀にあります。
男の子は、精巣炎を起こし、不妊になることがあります。
これらのことから、任意接種にはなりますが、ワクチンでの予防が望まれます。

1歳で1回、数年後に2回目を接種します。MRワクチンと一緒に行うことが多いです。

3歳頃に開始

日本脳炎

日本脳炎ウイルスの感染症で、脳炎を起こします。
蚊が媒介し、西日本に多いとされています。
ワクチンで頻度は低下し、2006-2015の10年で8人という報告があります。
2016年から定期接種になりました。
通常3歳時に2回、1年後に1回、9歳で1回、計4回接種します。
3歳前でも、生後6ヶ月から接種可能ですので、前倒しも可能です。

子宮頸がんワクチン

これまでの、いわゆる「感染症」のワクチンと若干毛色が異なる、「がんワクチン」です。
接種合併症(?)の問題がいろいろ言われたワクチンなので、ご心配な方が多いと思います。
効果と合併症について、現状をお伝えします。

子宮頸がんは、国内で年間1万人程度が発症し、年間3000人程度の死亡者がいます。
発症数は、女性では乳がんが一番多くて10万人弱、ついで3大がん(大腸癌、肺がん、胃がん)が4-5万人程度で続きます。
その次に来るのが、子宮体癌(しきゅうたいがん)、卵巣がん、子宮頸がん、悪性リンパ腫、甲状腺がん、肝臓がん、胆嚢がん、膵がんなどで、1-2万人程度です。
白血病、多発性骨髄腫、食道癌、膀胱癌あたりが5000人程度なので、それなりの頻度です。
(ちなみに小児がんは、全て集めても年間2000人程度です)

がんは、喫煙との関連などは言われますが、明らかな原因ははっきりしていません。
しかしながら、子宮頸がんだけは、そのほとんどがヒトパピローマウイルス(HPV)の感染により起こることがわかっています。
そして子宮頸がんは、20代からみられ、30代40代と、比較的若い女性でも発症します。
子育て世代のお母さんが子宮頸がんで命を落とす、というのはドキュメンタリー番組などでもしばしば取り上げられます。

HPVは性交渉により感染します。
性交渉前にHPVワクチンを打つことで、子宮頸がんは90%減らせることが海外からの報告でわかっています。
一度感染が成立してしまうと、ワクチンによる免疫では排除できないのですが、
感染前に免疫ができていると、そもそも感染しないということです。
このことから、12-16歳の女性に接種する方針となっています。

HPVは、200近い型がありますが、がんと関係するのは15種類くらいです。
そのうち、16型と18型が3分の2を占めます。
日本では、16型と18型をカバーする2価ワクチン・4価ワクチンが使用されてきました。
しかしこれでは3分の1が漏れてしまいます。
2023.4月から使用予定の、9価ワクチンでは、うち7種類をカバーでき、カバー率は95%以上です。
子宮頸がんの予防効果、という意味では疑いようのない効果が出ています。
ちなみに4価と9価では、残る2種類として、がんではなく尖圭コンジローマとの関係がある6型と11型をカバーしています。

次に、副作用・合併症の観点です。
一般の予防接種と同様、予防接種後の発熱や、接種部位の疼痛・腫脹・発赤・掻痒などは起こります。
また、アレルギー反応や、ごく稀にギランバレー症候群、血小板減少性紫斑病、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)などが起こるのも同様です。
HPVワクチンで特徴的なのは、失神や迷走神経反射が多く起こります。これは思春期の10代女性を対象としていることと関係があると思います。

また、機序が不明ながら、ワクチン接種後に、注射部位に限らない激しい疼痛やしびれ、脱力があらわれ、長期間持続するということが報告されています。
HPVワクチンは、日本では2013年4月から定期接種になったのですが、この報告を重視し、2ヶ月後には「積極的な勧奨を差し控え」、原因究明を進めてきました。
究明研究として有名なのは「名古屋スタディ」です。約3万人へのアンケート調査で、副反応と報告のあった24症状を、接種した人としなかった人で頻度を比較しましたが、発症頻度・持続に差は認めませんでした。
Suzuki S, Hosono A. Papillomavirus Res. 2018 June;5:96-103
また、これまで予防接種のほとんどを皮下注射で行ってきた日本において(海外ではほとんどが筋肉注射)、筋肉注射(であるHPVワクチン)に対して起こった反応ではないか、という意見もあります。
この場合、今回コロナワクチンで筋肉注射に慣れたこともあり、今後はより安全に行えるのではないか、と考えられています。

そのほかの調査も含め、現時点では、積極的勧奨差し控えを継続するだけの根拠が得られなかったと言うことで、2023年4月より、積極的勧奨を再開することとなりました。(この間ずっと、定期接種扱いではありました)
また、この間に接種機会を逃した方向けに、2023.4-3037.3月の3年間の間、平成9-17年度生まれの女性をキャッチアップの対象とし、公費負担されることになりました。

とはいえ、HPVワクチンとの関連は確認できていないものの、症状が出ている小児が一定数いることは事実です。
WHOは、「ワクチン接種ストレス関連反応: Immunization stress-related response/ISRR」という概念を提唱しました。
原因はなんであれ、症状にはしっかり対応しよう、ということです。
千葉県では、千葉大学医学部附属病院、帝京大学ちば総合医療センターを協力医療機関と指定し、HPVワクチン後合併症の対応をおこなっています。両病院とも当院からご紹介できます。

厚生労働省にも、予防接種相談窓口が設けられています。
Tel: 03-5276-9337 平日9-17時

長くなりましたが、当院としては、HPVワクチン接種は推奨いたします。
接種予定の方には、接種前後をベッドで横になってもらう、事前に丁寧な説明をする、など、合併症の発症に努めたいと考えております。

インフルエンザワクチン

他項、「インフルエンザ」を参照ください。

文責:力石浩志

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