インフルエンザ
- 例年A型2つ、B型2つの流行がある
- ワクチンは毎年、流行株を予想して作る
- 普通のかぜより症状が強い(高熱、関節痛、筋肉痛、熱せん妄、脳症)
- 脳症は重症だが、ワクチンで予防効果がある
- 抗ウイルス薬は5種類+麻黄湯。状況によって使い分ける
- タミフルは10代にも使えるようになった
- 異常行動は、薬ではなくインフルエンザのせい
小児の気道感染症の原因の一つとして、インフルエンザウイルスがあります。
たくさんの型がありますが、2023年現在、人で流行するのはA型(H1N1ソ連型とH3N2香港型の2つ)とB型(ビクトリア型、山形型の2つ)です。
毎年のように流行株が変わったり、株の中でも変異が蓄積されたりするので、
WHO(ダブリュー・エッチ・オー、世界保健機関)や厚生労働省が流行株を予想し、
その年のワクチンを作ります。
一般的な「かぜ」に比べ、熱が高く(39-40℃くらいになることが多い)、関節痛や全身の筋肉痛が出ることが多いです。咳も出ます。
インフルエンザの場合、通常であれば熱性けいれんをおこさないような年長児でもけいれんすることがあります。
けいれんは、熱性けいれんだけでなく、インフルエンザ脳症であることもあります。
小中学生では、幻覚が見えたりして、叫んだり暴れたりすることがあります。時々意識がちゃんと戻る場合は「熱せん妄(ねつせんもう)」と言い、問題はありません。
意識が正常に戻らない場合は、インフルエンザ脳症の可能性もありますので、医療機関を受診してください。
上記のように、ワクチンで予防することが可能です。
インフルエンザ脳症は年間発症100-300例と多くはありませんが、致命率は20%、後遺症は25%と、難しい疾患です。
可能であれば予防接種をお受けください。
罹患時には、抗インフルエンザウイルス薬として、
- 1日2回×5日間内服のタミフル
- 1日2回×5日間吸入のリレンザ
- 薬局で1回だけ吸入するイナビル
- 重症例では点滴のラピアクタ
があります。
発症から48時間以内に使用することでウイルスが増えるのを防ぎ、
有熱期間を平均3.5→2.5日に短縮する効果があります。
漢方の麻黄湯も同等の効果があることが示されています。
1回内服のみのゾフルーザもありますが、小児における経験がまだ少なく、10%くらいで変異株の出現=再発熱を来します。
メリット・デメリットを考えて処方を検討します。
タミフルは、歴史的に、内服した患者で異常行動がみられた、という理由で、10代(暴れた時に親が止められない体格の子)には投与が禁止されていました。
日本では、インフルエンザにかかった際、ほとんどの人がタミフルを内服していたため、
異常行動がタミフルのせいだと考えられたのです。
しかしながら昨今、タミフルを使用しない選択肢や、他の薬を使用するという選択肢が出てきた中で、
タミフルを使用しない患者でも同程度の異常行動が出ることがわかりました。
つまり、異常行動は、タミフルが原因ではなく、インフルエンザの感染自体が起こしていたという結論です。
その結果、2018年以降は、10代にもタミフルの使用が可能となりました。
とはいえ10代では通常上手に吸入が可能で、イナビルであれば1回で済みますので、そちらを選択する10代が多いです。
ただし、呼吸器症状が非常に強い場合は、吸入で気管支攣縮を来すことがあるので、内服をおすすめすることもあります。
<追記:2024/2/18>
咽頭AI画像診断機器「Nodoca」を導入しました。
文責:力石浩志