溶連菌感染症
溶連菌感染症について
今回は、現在大流行中の「溶連菌感染症」についてご説明いたします。
・発熱、咽頭痛、発疹などを起こす細菌感染症
・抗生物質内服で治療
・24時間程度で感染力はなくなる(小中学生は登校許可証が必要)
・繰り返しかかる可能性がある
・マスクが感染防御に有効
・合併症(腎炎、リウマチ熱)、症状の似ている別疾患(アデノウイルス、川崎病等)に注意
1. 溶連菌感染症とは?
溶連菌感染症は、A群溶血連鎖球菌(球状の菌が連鎖している)が咽頭に感染することで起こります。
主に喉の痛みと発熱、時に発疹、咳などの症状が見られます。
飛沫感染によって広がります。マスクなしで、顔が近いところで唾を飛ばして話す年少児の間でよく感染しますが、子どもが家に持ち込んだ場合、親にもうつります。
潜伏期間は2-5日程度です。
2. 症状、検査
溶連菌感染症の典型的な症状には、喉の痛み、発熱、時に発疹、咳などがあります。
教科書的には咳は認めにくいことになっていますが、実臨床ではけっこう咳が出ることもあります。
また、舌の表面が赤くなり、イチゴのようになることがあります(苺舌)。
診察で、咽頭が「灼熱様(しゃくねつよう)」に赤かったり、腫大した扁桃腺に「白苔(はくたい)」がついていたりするとわかりやすいですが、単に喉が赤いだけの溶連菌もよくみられます。
*2023年末現在、溶連菌の迅速抗原検査キットが手に入りません。
似た様な症状を呈するアデノウイルス、インフルエンザ、COVID-19などの検査が陰性で、
臨床的に溶連菌が疑わしい場合は、抗菌薬の処方を行うことがあります。
当初溶連菌が疑われたものの、のちにその他の症状が揃い、川崎病の診断になることもあります。
下記の様な典型的な経過を取らない場合は再診してください。
3. 治療と注意点
溶連菌感染症は、こどもの感染症の中では珍しい「細菌感染」なので、抗生物質によって治療をします。
抗生物質を使用すると、24時間後には症状がなくなりますが(登園・登校基準もこの段階で満たします)、
途中で使用をやめてしまうと、死にきらなかった溶連菌がまた増え、2週間後に同症状をぶり返します。
ですので、症状が改善した後も、抗生剤は指示通り最後までしっかり飲み切ってください。
(稀に、抗生剤が効かなかった場合=除菌失敗した際にも同じことになります)
また、感染の広がりを防ぐためには、抗生剤を飲み始めてから24時間までは、家の中でもマスクができると良いでしょう。
手洗いや咳エチケットの実践も重要です。
また、溶連菌に対する免疫はできないことが知られています。なので、何度も感染することがあります。
場合によっては、一人の患児から兄弟にうつり、また別の兄弟にうつったあと、最初の児に戻ってきたりすることもあります。
このような際には、兄弟を同時に治療したりもします。
感染を頻回に繰り返す場合には、耳鼻科と相談し、扁桃腺の摘出を行うこともあります。
4. 合併症:溶連菌感染後腎炎・リウマチ熱
稀ですが、溶連菌感染には2つの合併症が起こりえます。
1つは、溶連菌感染症後腎炎と呼ばれるものです。
症状として、感染症の3-4週後頃に、尿量が減り、むくみ、体重が増えます。
2つ目はリウマチ熱です。
抗生剤投与後も熱が下がらず、関節が腫れたり痛んだり、心臓の弁膜に炎症が生じることがあります。
これらの症状が見られた場合にはクリニックを再受診してください。
5. 千葉市の、登校・登園許可について
千葉市では、幼稚園・保育園、小中学校で、流行性の感染症の管理をしています。
有名なものはインフルエンザの登校停止ですが、他にも多くの感染症で、
感染力のある期間、登園・登校の制限を行っています。
溶連菌は、「抗生剤内服開始後24時間経過し、症状が改善するまで」と決められています。
小中学生は、上記を満たした段階で再度受診いただき、登校許可証を学校に提出していただく必要があります。
当院では、午前中に受診された方は翌朝、午後受診の方は翌日夕方に再診の枠をお取りいたします。
幼稚園・保育園児も本来は同様なのですが、幼稚園・保育園児では溶連菌感染があまりに多いこともあり、
現在千葉市では暫定的に「保護者記入の療養報告書」を幼稚園・保育園に提出いただくことで、登園許可書の代わりとしています。
上記の基準を満たした、と保護者が判断できたところで、書類を記載して提出してもらう運用になっており、
クリニック再診は必ずしも必要ではありません。
文責:力石浩志